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泉鏡花「ちくま日本文学全集17」
筑摩書房の「ちくま日本文学全集17
泉 鏡花」
1,200円+税:480ページ:
Cコード:0393 :刊行日: 1991/10/18
目次「雛がたり、国貞えがく、三尺角、
高野聖、山吹、天守物語、縁結び、歌行燈、湯島の境内」
泉鏡花の作品は、ネット上の青空文庫でも読むことができる。
ただし、著作権の問題が没後50年から、70年に変更になったので、今まで青空文庫に掲載されていた作家が、突然削除される可能性もある。
今のうちに読んでおいたほうが、得策ですよ。
おかげで没後50年だった、あるいは50年に近づこうとしているのに三島由紀夫の作品が、青空文庫に掲載される可能性も無くなって?きた。
青空文庫の入力ボランティア様たちの選択は、割と偏っている印象があるが…
以下、「高野聖」より、抜粋。
「 ずんずんずんずんと道を下りる、
傍らの叢から、のさのさと出たのは蟇で。
(あれ、気味が悪いよ。)というと婦人は背後へ高々と踵を上げて向うへ飛んだ。
(お客様がいらっしゃるではないかね、人の足になんか搦まって、贅沢じゃあないか、お前達は虫を吸っていればたくさんだよ。
貴僧ずんずんいらっしゃいましな、どうもしはしません。
こう云う処ですからあんなものまで人懐しゅうございます、厭じゃないかね、
お前達と友達をみたようで愧しい、あれいけませんよ。)
蟇はのさのさとまた草を分けて入った、婦人はむこうへずいと。
(さあこの上へ乗るんです、土が柔かで壊えますから地面は歩行かれません。)
いかにも大木の僵れたのが草がくれにその幹をあらわしている、乗ると足駄穿で差支えがない、丸木だけれどもおそろしく太いので、もっともこれを渡り果てるとたちまち流の音が耳に激した、それまでにはよほどの間。
仰いで見ると松の樹はもう影も見えない、十三夜の月はずっと低うなったが、今下りた山の頂に半ばかかって、手が届きそうにあざやかだけれども、高さはおよそ計り知られぬ。
(貴僧、こちらへ。)
といった婦人はもう一息、目の下に立って待っていた。
そこは早や一面の岩で、岩の上へ谷川の水がかかってここによどみを作っている、川幅は一間ばかり、水に臨めば音はさまでにもないが、美しさは玉を解いて流したよう、かえって遠くの方で凄じく岩に砕ける響がする。
向う岸はまた一座の山の裾で、頂の方は真暗だが、山の端からその山腹を射る月の光に照し出された辺からは大石小石、
栄螺のようなの、六尺角に切出したの、剣のようなのやら、鞠の形をしたのやら、目の届く限り残らず岩で、次第に大きく水にったのはただ小山のよう。」
美文調というのか、古語だ、とビビることはない。
樋口一葉に比べるとずっと読みやすいし、内容も平易だ。
「蟇(ひき)」というのは、カエルのこと。
カエルが女性の足に絡まっている、それに話しかけている時点で若い僧侶は、おかしいな、と気がつくべきなのに気がついていない。
もしくは気がついていないフリなのか?
「ずんずんずん」とか「のさのさ」とか、擬音語も面白い。
臨場感がある。
「高さはおよそ計り知られぬ。」というのに、「婦人はもう一息、目の下に立って待っていた。」
はやっ!
あちこちに伏線があるよ、怖いよ。
泉 鏡花」
1,200円+税:480ページ:
Cコード:0393 :刊行日: 1991/10/18
目次「雛がたり、国貞えがく、三尺角、
高野聖、山吹、天守物語、縁結び、歌行燈、湯島の境内」
泉鏡花の作品は、ネット上の青空文庫でも読むことができる。
ただし、著作権の問題が没後50年から、70年に変更になったので、今まで青空文庫に掲載されていた作家が、突然削除される可能性もある。
今のうちに読んでおいたほうが、得策ですよ。
おかげで没後50年だった、あるいは50年に近づこうとしているのに三島由紀夫の作品が、青空文庫に掲載される可能性も無くなって?きた。
青空文庫の入力ボランティア様たちの選択は、割と偏っている印象があるが…
以下、「高野聖」より、抜粋。
「 ずんずんずんずんと道を下りる、
傍らの叢から、のさのさと出たのは蟇で。
(あれ、気味が悪いよ。)というと婦人は背後へ高々と踵を上げて向うへ飛んだ。
(お客様がいらっしゃるではないかね、人の足になんか搦まって、贅沢じゃあないか、お前達は虫を吸っていればたくさんだよ。
貴僧ずんずんいらっしゃいましな、どうもしはしません。
こう云う処ですからあんなものまで人懐しゅうございます、厭じゃないかね、
お前達と友達をみたようで愧しい、あれいけませんよ。)
蟇はのさのさとまた草を分けて入った、婦人はむこうへずいと。
(さあこの上へ乗るんです、土が柔かで壊えますから地面は歩行かれません。)
いかにも大木の僵れたのが草がくれにその幹をあらわしている、乗ると足駄穿で差支えがない、丸木だけれどもおそろしく太いので、もっともこれを渡り果てるとたちまち流の音が耳に激した、それまでにはよほどの間。
仰いで見ると松の樹はもう影も見えない、十三夜の月はずっと低うなったが、今下りた山の頂に半ばかかって、手が届きそうにあざやかだけれども、高さはおよそ計り知られぬ。
(貴僧、こちらへ。)
といった婦人はもう一息、目の下に立って待っていた。
そこは早や一面の岩で、岩の上へ谷川の水がかかってここによどみを作っている、川幅は一間ばかり、水に臨めば音はさまでにもないが、美しさは玉を解いて流したよう、かえって遠くの方で凄じく岩に砕ける響がする。
向う岸はまた一座の山の裾で、頂の方は真暗だが、山の端からその山腹を射る月の光に照し出された辺からは大石小石、
栄螺のようなの、六尺角に切出したの、剣のようなのやら、鞠の形をしたのやら、目の届く限り残らず岩で、次第に大きく水にったのはただ小山のよう。」
美文調というのか、古語だ、とビビることはない。
樋口一葉に比べるとずっと読みやすいし、内容も平易だ。
「蟇(ひき)」というのは、カエルのこと。
カエルが女性の足に絡まっている、それに話しかけている時点で若い僧侶は、おかしいな、と気がつくべきなのに気がついていない。
もしくは気がついていないフリなのか?
「ずんずんずん」とか「のさのさ」とか、擬音語も面白い。
臨場感がある。
「高さはおよそ計り知られぬ。」というのに、「婦人はもう一息、目の下に立って待っていた。」
はやっ!
あちこちに伏線があるよ、怖いよ。
by stefanlily
| 2015-12-21 16:46
| 文学、books
|
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