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さらばモスクワ愚連隊

五木寛之の「さらばモスクワ愚連隊」を読んだ。
出版社編集長だったライターの本だったか、直木賞受賞のこの作品の紹介に惹かれた。
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当時、物語の進行とジャズ演奏が交錯する作品など無かったので、審査員の度肝を抜いたという。
 元ジャズのピアニストで現在は音楽プロモーターの北見という中年男性が主人公。
旧ソ連に向かうアエロ・フロートの機上から小説は始まる。
大学時代の友人である日ソ芸術協会の森島がお膳立てした、ソヴェートで日本のジャズ・バンドを呼びたがっているという企画に乗ってのことである。
以下、本文より引用。
「公演は九月だったが六月中にモスクワで打ち合わせをやって欲しいという話だった。(略)ロシアの聴衆がいったいどんなジャズを聞きたがっているのか、それが知りたいと思っていた。(略)
当の相手であるソ連対外文化交流委員会と、日本大使館の担当者との意見調整を終れば、十日余りの休暇が楽しめる。」
「八個の逆回転するダブル・ターボ・エンジンは、快調なテンポで迫力のあるジャム・セッションをやっていた。他の乗客たちにとっては、それは只の騒音に過ぎまい。だが、その轟音が時おり微妙に音階を変え、転調するのが私にはわかる。(略)
深い所に閉じこめておいたはずのピアノの音が、噴水のように目の前にふきあげてきた。(略)
靴先で軽く床をたたく出の合図。さり気ない導入部の数小節。滑りこんでくるクラリネットとトランペットの同調の合奏。(略)
心臓の鼓動を思わせるベースの底深い唸りと、旋律の流れを鋼鉄のタガのように締めあげるドラムのリズム。(略)したたる汗と仲間同士の目くばせ。微笑と、爽かな疲労。」
機上の轟音、騒音や揺れなどが「もはや再び帰って行くことのできない過去の世界」の記憶を主人公に呼び起こす。おそらく、こうした描写も文学賞の審査員たちを唸らせたことだろう。
 北見は白瀬という若い大使館員とモスクワのホテルで出会う。翌日の朝、散歩に出かけ、ボリショイ劇場の周辺で十七、八歳のミーシャという少年に声をかけられる。
「君の言う話というのは、たぶん個人的な貿易事業のことだろう」と、北見。「ぼくは闇ドル買いじゃない!」とミーシャ。少年は、「シャツとかスウェーターとか、バッグとか」が欲しいのだ。「グムに行きゃ何だって買えるんだ。」が、外国人旅行者のほうが洒落た衣類を持っている。だから、声をかけたのだった。
 この小説は時代がいつなのか、はっきりとは書かれていない。森島が学生運動に夢中になっていた、というからその後十年ぐらい後、といったところで1970年台だろうか。ミーシャのような青年は当時の呼称で、スチャリーガというそうだ。
ミーシャと再会の約束をした後、ユーリィ・ペトローヴィチ・マカーロフという青年が声をかけてくる。「地区の未成年問題委員会の処分を受けて」いるというあの少年に関わるな、と。
ユーリィは粗末ななりだが、折り目正しい雰囲気を持ったモスクワ大学の学生である。
対照的な二人の青年の描写で、映画「灰とダイヤモンド」の主人公と、かつては同じ思想を持った「同士」を演じた冷徹なエリート役の俳優を思い出した。ソ連とポーランドとでは、立場も状況も違う、と怒られそうだが。
 北見は白瀬の案内で、ソ連対外文化交流委員会第三部長のダンチェンコと会う。
「『私が知りたいのは、部長、あなたがたがどのようなジャズを求めておられるか、ということなんです』(略)
ジャズと一口に言っても、(略)たとえばポピュラーなダンス音楽から前衛ジャズまで、また小編成ものからシンフォニックなジャズ・オーケストラまで、(略)
私としてはジャズの発生から成長、現代にいたるまでの歴史的展望を三部に分けて構成したいと考えていること。また日本のオリジナル曲やロシア民謡をジャズに編曲したものもつけ加える積りであること。」
ここまで読んで、こういう優れたプロモーターが実際に日本におられるのなら、ジャズという音楽を一部の熱心なファンだけを集客する目的(そういうつもりでなくても、門外漢には敷居が高い音楽ジャンルという印象を与えている)ではなく、初心者のファンを開拓するつもりで五木氏のこの描写のような内容で企画なさったらどうだろう、と思った。
 ダンチェンコ部長は、ジャズは「まともな音楽」というよりは「娯楽の一種」だという。
「『ソ連ではサーカスやボードビルの人たちを人民芸術家と呼ぶそうじゃありませんか』(略)
『エストラーダ芸術とそれは呼ばれています。(略)それは交響楽団や国立バレエなどとは別の世界のものですよ。(略)あなた、ボリショイ劇場でジャズをやるなんて事が考えられますか?』
『考えられますね』(略)『あなたのおっしゃる芸術的音楽とは、一体どんなものです?(略)』
ダンチェンコ部長が(略)ピアノの前に坐った。(略)軽い、濁りのない旋律が流れだした。(略)骨太な指が、不思議なほどの優雅さで鍵盤の上にひらめくと、ふくみのあるフレイズが響きあい交錯しあって立ち昇った。(略)暗譜で楽々と弾いている。(略)だが、怖くはなかった。うまいピアノだが、それだけだ。」
部長が弾いたのはショパンの曲だった。「これが本当の音楽です。芸術です」
「気がついた時には、私はもうピアノの前に坐って、〈ストレインジ・フルーツ〉をイントロなしで弾きだしていた。
私刑にあった黒人が、丘の上の木にぶら下がっている。(略)それは、まったく哀れで滑稽な「奇妙な果実」だ。(略)
私は確かにブルースを弾いていた。(略)
この頑強な男の目から涙がこぼれ落ちそうになっているのを見てひどく驚いた、彼はあきらかに感動を押さえかねていた。(略)
だがやがてしゃんと背筋をのばすと、(略)振り返って言った。『それはやはり娯楽的音楽です。では、また』」

 この作品のクライマックスは、赤い鳥という楽器演奏も聞かせる「汚ねえレストラン」で北見が、思いがけない三人の若者と「セントルイス・ブルース」などのジャズをセッションする場面だ。
映画「リプリー」の中で、マット・ディーモン演じるトム・リプリーを垢抜けない胡散臭い奴、と馬鹿にしていたお坊ちゃま、リッキーの目の前でトムが、ジャズの演奏に加わって「ご寵愛」を勝ち得る場面を思い出した。

非常に映画的見せ場の多い小説である。
映像化はなされたのであろうか?
また、ジャズに詳しい五木氏の前歴も気になるところ。彼に限らず、今の若い作家達よりも上の世代は多才な方が多い。
 「商売になろうと、なるまいと、わたしは凄いジャズを聞かせてやりますよ、モスクワの連中にね」という北見の目論見は…続きは是非、本書を手に取って頂きたい。

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The Cat

Jimmy Smith / Universal Jazz


さらばモスクワ愚連隊 [新潮CD]

五木 寛之 / 新潮社


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by stefanlily | 2014-05-13 17:09 | 文学、books